アラサークライシス×アラサーリライズ

危機がチャンスに変わる108の物語

#再会(第5話)

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bakufu-fu.hatenablog.jp

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#再会

偶然なことなどこの世界にはひとつもなくて

すべては必然として目の前に現れる。

 

水曜日の午後。

私はあの路地裏の喫茶店でいつものように休憩していた。

今日は午前から雨が降っていた。

足下が濡れて気持ちが悪い。

 

さっきのプレゼンの反応が悪かったのは

きっとこの天気のせいだなと

しょうもない因果で自分を納得させていたとき

急に声をかけられた。

 

「おつかれさま。」

 

「えっ、あ、おつかれさまです。」

 

笑顔の彼女がそこにいた。

 

「今日は雨だからお仕事大変ですね。」

 

「はい。。」

 

「あ、ほらタオルあるから、どうぞ。」

 

「ありがとうございます。」

 

なんだろう、この人の距離感。

自然と心の中にすっと入っている感じ。

全然嫌な気がしない、むしろ

心地いい。

 

私たちは近況をざっくばらんに話しあった。

なんでもない会話が楽しかった。

仕事でミスをしたことも話してみようかと思ったが

他人にそんな話をしても迷惑なだけかなと思い

止めておいた。

 

彼女のこともいろいろ教えてくれた。

近くのマンションに住んでること

1年前に結婚したこと

主婦業のかたわら

フリーで教育の仕事をしていること

(セールス、マーケティング、組織のマネッジメント...)

 

全部なんでも話してくれたのに

結局何をやってるのかは分からなかった。

 

帰り際に彼女は私に言った。

 

「悩んでること、口に出してみてもいいんだよ。」

 

私はとっさに

「あの、また会えますか?」

 

「水曜日のこの時間はこの喫茶店にいますので

いつでもどうぞ。」

 

茶店を出ると雨がやんでいた。